佐野まいけるのイカ解剖ログ

趣味で解剖したイカの記録を載せていきます。

ケンサキイカ_オス_成熟度3a_UE-230408-001

基本情報

標準和名:ケンサキイカ
学名:Uroteuthis edulis (Hoyle,1885)
雌雄:オス
成熟度:3a
体重:704.5g
外套長:44.5cm

ID:UE-230408-001
解剖日:2023/4/8
入手日:2023/4/8
入手方法:購入
産地:東京都
状態:

解剖雑記

夏のイカと言えばケンサキイカ。ということで過去の解剖記録を引っ張り出してきた。これは下北沢のオオゼキで購入したもの。変わったものを売っていると有名なスーパーであるが、こんなにでっかいイカも売っているとは。
家から離れているので持ち帰りに非常に苦労した思い出の個体。

全体

サイズ感がどうにもわかりづらいのだが、うちにある一番大きなバットに斜めにしないと入らないサイズ。外套長だけで45センチくらいある。6月ごろに八丈島であがる「アカイカ」というやつだろうか。これ買ったの4月だけれども。詳しい水揚げ地を知りたいな(東京都とは書いてあった)。

色素胞

アオリイカと並んで人気の色素胞を持つイカだと思う
褐色、赤色、桃色、黄色かな?それに加えてオパールのように輝く虹色素胞もあるので、鮮度の良いものは輝きが眩しいほど。これをモチーフにしたハンドメイド作品もこの頃増えてきたね。

交接腕

ケンサキイカは大きさでだいたい雌雄が分かる気がする。これだけ大きくなるのは多分オス。ということで交接腕を探してみるとやはりあった。

ケンサキイカの腕 写真した側が交接腕(左第Ⅳ腕)。先端の方(右側)は吸盤がないのが分かるだろうか。

ケンサキイカの腕 拡大したものがこちら。肉眼で見るとはっきりわかるのだが、写真だと見づらいね。

ケンサキイカの交接腕 そんな時は茹でる。写真真ん中あたりから先端にかけて丸っこい吸盤がなくなってとげとげになっている。吸盤の配列などを確認するときは茹でるに限る。

吸盤・角質環

今回の一番の反省は吸盤をしっかり撮らなかった&メモしなかったこと。 上の二つの角質環の違いが分かるだろうか。上はとげとげしており、下は歯が平坦だ。上はおそらく触腕掌部の吸盤だが、下はどこの吸盤なんだ……。

漏斗軟骨器・外套軟骨器

ケンサキイカの外套軟骨器 ケンサキイカの漏斗軟骨器

多分私以外誰も興味のない、外套膜と漏斗の凸凹構造。種類によって形が異なるので注目している。ケンサキイカはI字型なのね。

墨汁嚢(&発光器)

ケンサキイカの墨汁嚢 銀色に輝いているのが墨汁嚢。実はケンサキイカには発光器があり、それは墨汁嚢の上(腹側)にポチっとあるらしいという噂を聞いていたのに、何もない。イカ仲間が解剖したときにはあったと聞いたので、何かの拍子にとれてしまったのかもしれない。いつかこの目で見てやる。

生殖腺

ケンサキイカの生殖腺 今回のケンサキイカはオス。よく成熟している。いつでも交接OK。

ケンサキイカの生殖腺 生殖腺だけ取り出したところ。

ケンサキイカの精巣 このトゥルっとしているのは精巣。

ケンサキイカの貯精嚢 渦巻き状のものは貯精嚢。

ケンサキイカの輸精管 横縞が入っているのは輸精管。

ケンサキイカの精莢嚢 精莢嚢は中に入っている精莢(細長い筒)の様子がはっきり見える。

ケンサキイカの精莢 精莢嚢から精莢を取り出したところ。これ黒バックで撮るべきだったな。

ケンサキイカの精莢 精莢を刺激して、中から精子塊が飛び出してきたところも撮影。

循環器

ケンサキイカのエラ、エラ心臓、心臓 細長いのがエラ、その根元の丸っこいのがエラ心臓、中央のピンクのやつが心臓。

ケンサキイカの心臓、エラ心臓 冷凍ものだと溶けてしまいがちなエラ心臓もプリッと新鮮。

消化器

ケンサキイカの消化器 消化器全体。スルメイカなどと比べてなんだかふわっとしている。肉眼で見るとなんとなく胃と盲嚢がわかるけれど、写真だとさっぱりだな。

ケンサキイカの胃 胃を切り開いたが空であった。

ケンサキイカの肝臓 肝臓だけを切り出したところ。シュッとしている。料理として出てくることは少ない。

星状神経節

イカの数あるパーツの中でも結構お気に入りの星状神経節。外套膜と肝臓のつなぎめのアタリにある。

ケンサキイカの星状神経節 肝臓をグイッと引っ張ると放射状の神経の束が見えてくる。

ケンサキイカの星状神経節 それを更に引っ張ったもの。この筋1本が神経1本。すごく太い神経だ。毎度見るたび関心する。

口球

今回口の周りが比較的うまく撮れて満足だ。

ケンサキイカの口 口全体。

ケンサキイカの囲口膜 引っ張って伸ばしているのは囲口膜。口の周りのビロビロである。

ケンサキイカの口唇と囲口膜 その囲口膜と口唇だけを取り出したのがこちら。どうしてこんなことをしたのか自分でもよくわからないが、なんだか綺麗だ。

ケンサキイカの上顎板、下顎板、歯舌 お馴染みの構図でカラストンビと歯舌。口のこの丸い筋肉が愛おしい。

ケンサキイカの歯舌 歯舌拡大。このザラザラで餌を摩り下ろす。私も摩り下ろされたい。

ケンサキイカの上顎板と下顎板 取り出したカラストンビ。左がカラス(上顎板)で右がトンビ(下顎板)。綺麗にコレクションしたいのだが、そのままにしておくと端の方が反り返ってしまったり割れてしまったりで、いまのところアルコールに漬けるくらいしかやり方がわからない(場所を取るのでなるべくやめたい)。

眼球

ケンサキイカの眼球 眼球の写真はこれだけだ。摘出に失敗したから。ケンサキイカ含むヤリイカ科は閉眼目という仲間に属し、眼球の外側に透明な膜があるのである。このせいで眼球の取り出しにちょっとコツがいるのだが、今回は両眼とも失敗してしまった。

ケンサキイカの水晶体 なんとか取れた水晶体。前にケンサキイカの水晶体を食べたことがあるのだが、味のないキャラメルのようであった。

平衡石

平衡石も忘れず摘出。いつか本当に写真集を作りたいが機材と技術が必要だな。 ケンサキイカの平衡石(表) ケンサキイカの平衡石(裏) 裏表両方撮影。

ゲスト

今回はゲストにアニサキス君が来てくれていた。生殖腺のあたりにいた気がする。 アニサキス 自分の胃にいない限りは可愛いやつである。醤油をかけても元気いっぱいであった。

反省点

一番はやはり吸盤(角質環)の記録をきちんとしていなかったことだろう。いままでもそうだったのだが、今回中途半端に角質環の歯の違いを見つけてしまい(しかもすべてが終わってから)、非常に悔しくなった。記録だけでなく現物も保存していないので、次回以降はどんなイカでも触腕と通常腕の角質環は保存しよう。