佐野まいけるのイカ解剖ログ

趣味で解剖したイカの記録を載せていきます。

ホタルイカ_オス_成熟度2b_WS-210215-002

基本情報

標準和名:ホタルイカ
学名:Watacenia sintillans
雌雄:オス
成熟度:2b
体重:3.0g
外套背長:4.0cm

ID:WS-210215-002
解剖日:2021/2/15
入手日:2021/2/14
入手方法:採取(頂き物)
産地:富山湾
状態:

解剖雑記

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さてさて、ホタルイカの「オス」である。前回の記事で書いた通り、この時期にホタルイカのオスが捕れるのは珍しいことだ。そもそも生き残っている数が少ないうえに、食用に売られているホタルイカは漁師さんによって選別されてオスははじかれているそうだから、我々の手元へやってくることは普通はない。富山の海岸に通って、百匹掬ってやっと1匹手に入るかというレアものなのである。(ざざむしさん本当にありがとうございます)

anatomio-de-kalmaro.hatenablog.com

なぜ流通時にはじかれているか? というのは食べてみてわかった。前に書いた記事の後半でホタルイカのオスを食べた感想を書いているのでセルフ引用する。

明らかにメスより小さく痩せた感じ。食べさせてもらうとメスと違って全然肝の味がしない。イカの身の味がより感じられるけど、やっぱりみんなが好きなのはメスだろうな。

www.michael-sepio.com

決してまずかったわけではないのだけれど、たくさんのメスに混じって食べたら明らかに「あれ?なんかおかしい?」と気付くレベルなので、その昔クレームが来たりしたのかもしれない。しかし、ほとんどの消費者にとって無価値なものでも、私にとっては宝物。大切に解剖する。

ではオスとメスはどうやって見分けるか。ひとつは大きさ。

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こんな感じでメスのほうが明らかに大きい。この写真のメスは体重6.5g/外套背長53mmあるのに対し、オスは体重3.0g/外套背長40mm。オスは貧相である。

もうひとつのポイントは外套膜の形だ。

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メスは途中まで円筒系で、先のほうだけ円錐っぽくなっているのに対し、オスのほうは全体的に円錐という感じ。オスの方がしゅっとしているといえば伝わるだろうか。メスは卵が外套膜後端にぎっしり詰まっているので、こんなシルエットになるのではないかと思う。では性成熟していないオスとメスはどれくらい違いがあるのか、というのは気になる。

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パカッとな。思ったより肝臓が小さくない。味ではハッキリ差を感じたんだけど、もしかしたら肝というより卵の味だったのか・・・? 今回も茹でて食べてみたけれど、バラバラにしてから茹でたので正直味がよく分からなかった。今後の課題だ。

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メスとは確かに違う内臓だが、精巣、貯精嚢、輸精管などの細かい観察はできなかった。私の目が悪すぎるのか。あと内臓透けすぎ。

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精莢嚢らしきところに、精莢っぽいのがみえる。これがどうやってメスの頸部に付くのか。見られるなら8万円くらい払ってもいい。

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さてお待ちかねの交接腕だが、これが非常に分かりづらい。右第Ⅳ腕が交接腕とのことだが・・・(写真:黒い発光器がついている2本の腕の下の方)。

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別角度からもう一枚。右の腕の写真中央部になんかちょっとでっぱってるところがある。これがホタルイカの交接腕の特徴らしい。世界イカ類図鑑によると「腕先端近くに2枚の半月状膜がある」とのことだが、2枚?? 1枚はギリギリわかるが、それ以上は私の目では確認できなかった。もっと根気よく観察しなくてはならん。

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最後にもう一枚。腕の左側に不自然なふくらみがあるのがわかる。これが例の膜だと思われる。膜状になっている意味って何だろう。2枚あるというならその隙間に精莢を滑らせて、メスの頸部へ渡すのかしら。

反省点

・交接腕がどの腕かは事前に確認していたが、詳細な特徴まで覚えていなかったので観察が中途半端
・生殖器の観察がちょっと雑だった

貴重なオスを解剖出来て、本当に嬉しい。もっとたくさん解剖して特徴をつかみたいので、やはり富山に行くしかない。というか富山に春の3か月間くらい住みたい。